【モンハン】ライズのラスボス、その狙い
集会所クエストラスボスまで含めネタバレがございますのでご注意ください。
「Fate/Grand Order」のメインシナリオ第一部や「モンハンワールド」のラスボスについても言及あり。
⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎
今作の里(過去作で言う“村”)シナリオはいたってシンプルでした。
生まれ故郷たる里を守るために、多くの人々が「それぞれの役割」を全うする物語。
ハンターの出自が「里生まれ里育ち」というのが面白い点で、作品の舞台の外から雇われてきたことが多い過去作のハンターとは対照的です。
良い意味で田舎的な繋がりが深い人々の物語でした。
そして集会所シナリオ。
風神龍イブシマキヒコと雷神龍ナルハタタヒメというつがいのモンスターが起こした災禍に立ち向かう物語。
ライズのタイトルロゴはやはりこの龍達を表現したものなのでしょう。
問題は、発売時点でのゲーム本編で彼らとの闘いが完結していないことです。
対となる存在である以上、あの二龍が合流したときこそが真の最終決戦となるはずで、今後のアップデートを待たねばなりません。
こうした形式は本流ハンティングアクションのモンハンでは初めてですね。
例えばワールドのラスボス、ゼノ・ジーヴァにも後に完全体となるムフェト・ジーヴァが登場しましたが、あくまでワールドの物語の本筋はゼノ・ジーヴァとの闘いできちんと完結しており、完結を今後のアップデートに委ねることはしませんでした。
対して、ライズは「パッケージゲームソフト」として考えると、「未完成品」とも言われかねない状態になっていると言えます。
しかし、アップデートによって「運営」していくタイトルが増えた昨今、パッケージゲームの物語も長期に渡って展開していく試みはもっとあっていいはずです。
以前僕はゼノ・ジーヴァについて、「ラスボス戦として感情移入できる要素が少ないが、その少なさにこそ『ワールド』の物語として大きな意味がある」という趣旨の記事を書きました。
【モンハン】ワールドのストーリーとラスボスについて - Setsuna Kawaii
そしてイブシマキヒコ/ナルハタタヒメには、ワールドと逆の狙いがあるのではないかと考えます。
つまり、「徹底的に感情移入できるラスボス戦」を作りたいのではないでしょうか。
少し脱線にも見える話をしますがよければお付き合いください。
僕は、「分割商法」を効果的に活用した作品が好きです。
例えば「最初に物語のプロローグとなるゲームを発売し、のちに本編にあたるゲームを発売する」形式だった「METAL GEAR SOLID V」や「WHITE ALBUM2」。
それらの作品は、プロローグをプレイした後本編を待つ時間があることで、作品に対する想いが増大していき、いよいよ本編をプレイできるタイミングで興奮がピークに達する体験ができました。
もう少し分かりやすい例を挙げるなら、映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」では、シリーズ25年分の時の積み重ね(TVシリーズ+旧劇場版+新劇場版など)があったからこそ、ついに完結編を観賞できた喜びが増した方は多かったでしょう。
つまり、「完結まで待たされることで、その間に感情移入度が上がる体験」もアリだよね、ということです。
そして、「Fate/Grand Order(FGO)」の話も少し。
これもシナリオが「分割」されているスマートフォンゲームです(少しの分量のシナリオを矢継ぎ早に実装していくのではなく、膨大な分量を数ヶ月おきに実装するスタイル)。
最初から膨大なシナリオがあるパッケージゲームでは、「Aさんは1章をプレイしているが、Bさんは3章をプレイしている」というように、各プレイヤーの進行度合にばらつきが大きいです。
それに対しFGOでは、メインシナリオ更新のタイミングで多くの人が「物語の同じ章を同時にプレイしている」体験を共有できます。
「ほぼ皆が3章をプレイ中」みたいな状態が作れるわけです。
この作品がそれを最大限に活かしたのが、メインシナリオ第一部の最終章でした。
そこでは、普段は完全ソロで遊ぶ他シナリオと異なり、ボスをプレイヤー総出で迎え撃つレイド戦が行われました。
それにより、「皆が一斉に最終決戦に参加している一体感」を生み出すことに成功します。
こうした他ゲームの事例を踏まえると、モンハンライズがやろうとしていることは……
「ラスボスとの最終決戦をあえてアプデまで待たせることで、プレイヤーの感情移入度を上げる」
「多くのプレイヤーが本編をクリアしているであろうタイミングで最終決戦を実装することで、一斉にプレイできるようにする」
「一斉にプレイさせることで、皆が同時にラスボスに挑んでいる一体感を体験させる」
こうした試みなのではないでしょうか。
里の人々が一丸となって百竜夜行に立ち向かったように、我々ハンターも一丸となって、最後の試練に立ち向かえるなら。
それはきっと心躍る冒険になると思うのです。
今後のアップデートで新たなエンディングを実装予定だそうですが、おそらくそこで「開幕」するのだろうと期待しています。
以下余談です。
ひたすら快適ですね。ゲームプレイが。モンハンをやっていて「ここストレスたまるよな」とか「面倒だな」って思っていたものがほぼ全て解消されています。過去シリーズもストレス削減に尽力していましたが、ライズのストレスフリーっぷりはその比じゃないです。
快適すぎて過去作にはもう戻れません。過去作で「不親切なゲームでやだな」って思った方はチャンスです。
もはやゲーム史に残るスーパー大親切ゲームへと変貌してます。生きてて良かった。
もちろん「ホット/クーラードリンク廃止はさみしい」って気持ちも分かりますけどね!
あとヒノエ/ミノト姉妹とか、
本当はハンターだってバレバレなのに「なんかかわいそうだから」という理由で皆に商人扱いしてもらってるロンディーネさんとかキャラクターも魅力的。
主人公ハンターもよく喋りますし、ライズの少しアニメっぽいポップな味付け、とても素敵でした。