【WHITE ALBUM2 考察】「想いの認識の前提」を裏返す手法(前編)

今回は作品知ってる方向けです!

 

前編(このページ)では、introductory chapter(以下“IC”)と、ICを描いたアニメ版において、かずさがユーザーの心を掴んだ理由の一端を示します。

後編では、前編で説明した手法が雪菜の場合ではどう使われているか、を語っていきます。後編はこちら↓

【WHITE ALBUM2 考察】「想いの認識の前提」を裏返す手法(後編) - Setsuna Kawaii

 

「想いの認識の前提を裏返す」手法 ~かずさの場合~

メインヒロインの1人、かずさは非常に人気があります。特に、普段はつんつんしていながらも、その奥底にある想いの深さ、まっすぐさに心打たれた方は多いのではないでしょうか。

では、「奥底にある想いの深さ」をICではどう印象づけていたかというと…

 

ユーザーからかずさへの認識の変遷(だいたい)

冒頭:黒髪ロング美少女。基本的に誰に対してもつんつんしている。かわいい。

序盤:なんだかんだ同好会に付き合ってくれる。実は良いやつ。まだつんつんしている。かわいい。

中盤:めちゃくちゃ良いやつ。あとかわいい。まだ結構つんつんしてるけどなんだかんだ好きではいてくれてるんだろうなぁ。

 

ここまでの認識で重要なのは、「かずさって、いつも春希にツンツンしてるけど本気で嫌ってるわけではなくて、むしろ好きな方だろうけど、それがどれくらいの『好き』かは掴めていない」という点です。

ユーザーはこの時点でも「かずさは春希のことが好きなんだろう」という認識自体は持てています。しかし、その「好き」の大きさを正しく推し量るまでには至っていません。

仮にこの時点で「大好きなんだろうな」と思えていたとしても、彼女の想いのとてつもなく深い部分までにはアプローチできていません。

 

そして、そうこうしているうちに雪菜が春希に告白、かずさは彼らとの友人関係を維持することにします。良いやつすぎる。しかし…

 

終盤:かずさの本当の想いを知る。“恋人としての春希と雪菜”と共にいることは拷問のようなものだったこと、本当は春希のことが大好きだったこと、さらにアニメ版ではこれが判明した直後に過去編が描かれ、その想いが本編開始以前からの極めて強いものであること、を一気に叩きつけられる。

(この過去編「雪が解け、そして雪が降るまで」は、元は原作のゲームソフトに同梱されている特典小説。

ゲームソフトに必ず付属しているエピソードであり、アニメでは本編そのものの中に組み込まれていることから、この過去編がいかに作者サイドからも重要視されているエピソードかがわかる)

 

想いが明かされるシーンでの挿入歌「After All~綴る想い~」も相まって、この瞬間ユーザーはまさに打ちのめされるような衝撃を受けます。

ここから過去編までを通して、かずさから春希に向けられる「好き」の純度は、ユーザーの想像を遥かに超えていたことを思い知らされます。

こうしてユーザーの認識の前提はひっくり返ります。これまで中空にふんわり浮いていた「かずさから春希への好感度の認識」が激烈に再定義されるのです。

 

ICの全てを体験した後のユーザーの認識

冒頭:かずさ…ずっと好きでいてくれたんだな…

序盤:かずさ…ずっと好きで(ry

中盤:かずさ…ずっと(ry

終盤:か(ry

 

これまでの認識は全て塗り替えられました。あらゆるエピソードの背後に圧倒的な「好き」があったことがわかり、その1つ1つが愛おしく思える大じかけです。こうしてユーザーの心はかずさにがっしり掴まれ離れられなくなるのです。

 

たとえば「魔法少女まどか☆マギカ(まどマギ)」における「ほむら から まどか への好感度認識」などでもこれに近い手法が使われています。

まどマギにおいても本作においても、想いの大きさを認識しきれないよう丁寧にぼかしつつ、その後に示されるあまりにも真っ直ぐで深い想いとのギャップによって、キャラクターを印象づけているのです。

 

後編では、「雪菜の場合はこの手法をどう使っているのか?」を語っていきます。

後編はこちら↓

【WHITE ALBUM2 考察】「想いの認識の前提」を裏返す手法(後編) - Setsuna Kawaii